年末年始に読んだ洋書。

Oscar Wilde/F.H. Cornish/Annabel Large「Macmillan Guided Readers Elementary」『The Picture of Dorian Gray』(YL2.8、語数16000)読了。 密度の濃い内容でした。
画家Basilが、友人で若い美男Dorian Grayの肖像画を描きます。そこに、Basilの悪友Henryが入り込んできて…。

まず、BasilのDorian Grayに対する感情が、アヤシイですねえ(笑)。かの戯曲『サロメ』を書いたワイルドですから、さもありなん、というところでしょうか^^;)。

Dorian Grayが、己の魂と引き換えに自身の願いを叫ぶ場面は、ゲーテの『ファウスト』を彷彿とさせます。ワイルドも、意識していたのかな。

Dorian Grayは、「老醜」という不条理に抗そうとします。そのキーアイテムが絵画、というのが、興味深いですね。本書の舞台は、まだ写真が普及する前と思います。だから、人びとが絵画、なかんずく、肖像画に何らかの呪術的な力を感じたとしても、不思議はないのかもしれません。ベンヤミンの言う『複製技術時代の芸術』以前の芸術、なので、Dorian Grayの肖像画には“アウラ”が宿っていたとも言えるかも^^;)。



Frances Hodgson Burnett「Penguin Readers level 2」『Small Soldiers』(YL2.5、語数9200)読了、せず(苦笑)。半分くらい読んだので、プラス4600語としておきます。



Gavin Scott「Penguin Readers level 2」『The Secret Garden』(YL2.4、語数9800)読了。バーネットの有名な『秘密の花園』の簡約版です。大学時代、雑多な書物を乱読していた頃、本書は新潮文庫の邦訳で読みました。

といっても、内容はほぼ忘れていました^^;)。本書を読みながら、「あ、そういえば、鍵を見つけるシーンがあったなあ」とか、思い出したりもしました。多分、省略なしの完全版では、もっと少年少女たちの心情の変化が、きめ細かく描写されていることでしょう。いつか原文を読んでみたいです。



Gillian Cross「Oxford Bookworms Library 3」『On the Edge』(YL3.2、語数11000)読了。先の『The Secret Garden』に、頻繁に出てきた単語“moors”が、本書のGlossaryに載っていました。『The Secret Garden』を読んでいた時に推測していた意味とほぼ一致していたので、一安心です。

「反家族思想」を掲げる過激なテロリストに、少年が攫われます。だんだん、少年は、何が本当だかわからなくなっていきます。読んでいる私も、(内容や設定が)なんだか良くわからなくなっていきました^^;)。

何を信じるべきかで混乱するこの少年は、さらに思考を突き詰めれば、デカルトの“コギト・エルゴ・スム”の境地まで行きそうな勢いでした。



Nathaniel Hawthorne「Penguin Readers level 2」『The Scarlet Letter』(YL2.4、語数8200)読了。有名なホーソン『緋文字』の簡約版です。ちなみに、『緋文字』の「文字」は、この場合「もんじ」と読みます。私の勝手な推測ですが、字形自体を意味する時は、「もじ」ではなく「もんじ」という気がします。「大文字山」は「だいもんじやま」と読みますしね。

閑話休題
本書では初め、不義の子を産んだ女性ヘスタが、緋色の“A”文字の刺繍を胸部に身につけさせられます。『日本大百科全書』によると、この“A”文字は、「物語の冒頭では姦通Adulteryを意味したが、しだいに有能Able、天使Angelなどの意味をもつようになる」のだそうです。私には、これら象徴的意味合いの変化はとても読みとれませんでした^^;)。

本書は、17世紀アメリカが舞台ですが、“新大陸”と言われたアメリカにかえってヨーロッパ中世的な風習が残っている、という例に当りますね、この“A”文字は。ヨーロッパ中世史家・阿部謹也さんが言っていた、「聖性の呪縛」という観点でこの小説を読み込めば、大変興味深いだろうなあ、と思いました。

挿絵は絵画的で、ドラマチックな内容を盛り立てます。表紙のイラストも、格好良いです。